西暦二千十八年二月二十一日

見ているだけで哀れをさそう老犬のいるたばこ屋さんの前、背嚢にネームプレートのぶら下がったアングロサクソンに火を求められた。不思議とどの言語で頼まれたか憶えていない。IMCO の復刻の、灰羽のレキが使っていたような発火装置を手渡す。たっぷり 1 秒ほど戸惑った彼はその機構をしっかり把握して求めていた火を得ることができたようだった。お返しに、と真紅の色をしたゴルフボール大の真球をくれた。彼の故郷では余るほど産出されるという。自由意志球だった。わたしはありがとうと日本語で返し、タバコ屋の影のところ、駅前のファミリーマートの燃えるゴミ入れにそれを投げ込んでその日はおしまい。