西暦二千十七年十月三十一日

さむい。

 

家の近くの道で工事をやっていた。

近所の小学生はみんな通学路にしているそこそこ大きな道、とはいっても郊外も郊外なので片側一車線しかない。片側一車線なのに広いというのは中央分離帯がアホみたいに幅をとって、クローバーやらレンゲやらが芝生のようになっている。植樹ももちろんあり、地平の向こうまでプルーン(実の拾い食いを毎年楽しみにしている)が送電鉄塔を間に挟みながらも等間隔に立つ。その中央分離帯が今度の工事では削除されて、ついでにとうとう道が速くなるらしいとの回覧板が回ってきた。速い道、高き道とも呼ばれるハイウェイというのは壁で隔てられ、交通するだけで料金が発生する。しかも通常の人間の侵入を拒み、原動機付の人類にだけ開かれた超常の交通である。疑わしきは加速せよ、とグレン・グールドは言った。超常のピアニストもまた原動機付であったとの発見が世間を震撼させるようなことはなく、やはり速すぎたのだった。ハイウェイで速くなっている人間のことをハイウェイ・スターと言うのは、原理上この宇宙のあらゆる星と星を繋ぐからに他ならない。そうか。そんな速い道がついに地元にやってくる。町の老人と同じくらいの年齢のプルーンはもう根絶やしになってしまっても大丈夫、触れることは叶わなくても白線の向こうから放射線にまみれた異星の果実が転がってくるのを、もう何度も見たことがある。

 

明日に続く。